Vol.48 2011.04.15
発行/編集 全国商工会連合会
http://www.shokokai.or.jp/


対談 商工会に期待する

 

石澤 義文 全国商工会連合会会長
原 一郎 中小企業庁長官



石澤 昨今のわが国経済は、一部に持ち直しの動きがみられるとされておりますが、円高に加えて、資源価格の高騰、デフレ圧力など、特に、地方の中小・小規模企業を取り巻く環境には、依然厳しいものがあります。
原長官は、現下の中小企業の景況をどのように捉えていらっしゃいますか。
高原 確かに、統計上は一部に回復の動きもみられますが、各地の中小・小規模企業の経営者の皆様とお話しさせていただくと、「経営の現場の感覚としては、非常に厳しい」といった声をよく耳にします。
 デフレから脱却し、日本経済を成長路線に回帰させるためには、地域経済の活性化が非常に重要となります。地域の中小・小規模企業の皆様が元気にならないと、わが国全体としても元気になりえません。
 そこで、わが国の「強み」を最大限に活かすとともに、今後の経済を牽引するため、新たな成長産業を育て、雇用を創出するための「新成長戦略」の実現を推進・加速してまいります。
石澤 例えば、北海道の白老町商工会では、町民の皆さんが町内の施工業者を利用して、住宅リフォームや耐震改修を行った際、一定の条件を満たすと改修費用の10%を助成する制度を設けたところ、瞬く間に予算がなくなるほど申し込みが殺到し、大きな需要が生まれたと聞いております。
住宅リフォームや福祉関係など、私ども中小・小規模企業が受注しやすい仕事の発注がなされるよう、中小・小規模企業に波及効果のある施策を講じていただくよう望んでいます。
高原 昨年11月に成立した平成22年度補正予算では、経済全体が持ち直すうえで、中小・小規模企業の皆様にも仕事が波及するよう、学校等の施設の耐震化、高規格幹線道路等の社会資本整備などを盛り込みました。
また、現在、国会でご審議いただいております(※対談日は3月9日)平成23年度予算案においては、昨年9月に閣議決定されました「新成長戦略実現に向けた3段構えの経済対策」に基づき、平成22年度予備費と補正予算に続く3つ目のステップとして、中小企業対策に必要な予算措置を計上しております。
石澤 私ども商工会では、昨年11月の商工会法施行50周年記念全国大会において、「継続的な景気対策の実行」「小規模事業対策予算の拡充」とともに、「マル経融資制度の拡充措置の延長」など、中小・小規模企業の資金繰り対策に万全を期すよう、関係各方面に対し、要望の声を強く挙げたところです。
 「3ステップ目」となる平成23年度予算については、どのような施策が盛り込まれているのか、お伺いいたしたいと思います。
高原 地域経済やそれを支える中小企業の活性化のためには、中小企業対策の根幹をなす資金繰り支援に万全を期すことが不可欠です。 そこで、条件変更や借換保証の推進などの資金繰り支援を実施するとともに、平成22年度末までであったマル経融資制度の貸付限度額等の拡充措置についても、平成23年度も引き続きご利用いただけるよう必要な予算措置などを盛り込んでいるところです。 また、意欲ある地域、中小・小規模企業を支援するため、「地域力活用新事業∞全国展開プロジェクト(注:平成22年度までの事業名称は「地域資源∞全国展開プロジェクト」)」を用意しています。これは、商工会等が中心となって、地域の小規模企業による全国規模の市場に向けた事業展開を促進するための事業で、地域の資源を活かした特産品や観光開発を積極的に支援するものです。 また、今年度から、商工会地域では、特に関心の高い『地域の課題をその生活者の視点で解決するための「コミュニティビジネス」を創出する事業』も補助対象にしました。
石澤 近年の地域コミュニティの疲弊は著しいものがあります。 特に、商工会地域の大半を占める中山間地域においては、過疎化・高齢化が大幅に進み、地方の小さな町では、魚屋や八百屋がなくなってしまったところもあります。 また、公共交通機関が廃止されたところも多く、移動の足が限られている高齢者が“買い物難民”になるケースが発生しています。 そのような中、われわれ商工会は、今や、地域コミュニティを守るための“最後の砦”的な存在であると思っています。商工会として、宅配事業や乗り合いタクシー事業、また、防犯・防災活動など、地域コミュニティ維持のための活動を一層強化することが必要だと痛感しています。 さらに、さきほど、長官からお話のあった「コミュニティビジネス」の創出についても、われわれ商工会では、大いに推進していく必要があると認識しております。
高原 国内市場の開拓のみならず、中小企業の皆様がアジアをはじめとする新興市場の成長によるニーズを取り込み、海外の市場を新たに獲得していくことも、わが国経済が成長していく中で極めて重要です。
 昨年10月に経済産業大臣を議長として立ち上げた「中小企業海外展開支援会議」の下で、農林水産省やJETRO、中小企業基盤整備機構などの関係機関と連携し、地方経済産業局を中心とした中小企業の海外展開を一貫支援する体制も整えました。
 また、地域産品のブランド確立や海外販路開拓を目指したJAPANブランド育成支援事業などを積極的にご活用いただき、多くの中小企業に海外市場を獲得していただきたいと思います。
石澤 グローバル経済の進展の中で、人口減少に伴って国内経済のパイの縮小も懸念されます。中小企業にとっても、海外展開は避けて通れない課題です。全国連においても、中国をはじめとするアジアへの販路開拓等について、会員企業を積極的に支援していくこととしています。
高原 各地の商工会においても、小規模事業者を取り巻く各種課題を日々解決していただいておりますが、昨今の中小企業の経営課題は複雑化・高度化しており、個々の中小企業支援機関の日常的な相談のみでは十分な対応が難しくなっています。 そのため、商工会をはじめとした幅広い支援機関からなる「中小企業支援ネットワーク」を新たに構築し、また、豊富な中小企業支援実績を有する専門家が各支援機関の現場で高度専門的な相談をサポートしていくことで、支援機関の連携強化や支援能力の向上を図りながら、中小企業が抱える経営課題への支援体制を強化していきたいと考えています。
石澤 われわれ商工会は、昨年度、法制化50周年を迎えました。次なる50年に向けて、まさに地域社会に貢献する商工会の果たすべき使命を改めて再確認したわけですが、商工会が地域貢献事業を強力に推進していくためには、商工会の原点であるきめ細やかな「巡回訪問」を徹底していかなければなりません。
巡回訪問は、事業者ニーズの把握や経営課題の解決につながり、ひいては、地域に暮らす方々が抱える問題点の発掘に結び付いていくものです。
全国連では、巡回訪問の核となり、高度化・専門化する中小・小規模企業のニーズに対応できる人材を育成するため、「経営支援マネージャー」制度を設けることにしております。商工会職員の資質向上について、これまで以上に一層強力に取り組んでいきます。
高原 国の施策を広く隅々まで普及させるためには、行政の力のみでは限界があります。石澤会長がおっしゃられるように、巡回訪問を特長の一つとする商工会のご協力が不可欠です。
より多くの中小・小規模企業が元気になり、地域発展の要となっていただけるよう、商工会の経営指導員のみなさんには巡回訪問を徹底し、中小企業支援策を多くの小規模事業者にお伝えいただくなど、引き続きご協力よろしくお願い申し上げます。
近年の激変する環境変化に伴い、中小企業施策においても新たな課題が発生しており、省庁を超えた横串の政策が求められています。中小企業庁においても、これまでの概念や政策手段にとらわれることなく、中小企業の皆様が自律的に発展することのできる仕組みを作り、その実現を図っていきます。
石澤 われわれも、全力を挙げて、中小・小規模企業を支援していきます。全国津々浦々にあり、青年部・女性部を含め110万人の経営者の方々が会員になっている商工会を、国としても、ご活用いただくとともに、より一層のご支援をお願いしたいと思います。 本日は、お忙しいところ、ありがとうございました。

写真左:原一郎中小企業庁長官
写真右:石澤義文 全国商工会連合会会長

* 詳しくは月刊「Shokokai」4月号をご覧下さい。