Vol.42 2010.10.12
発行/編集 全国商工会連合会
http://www.shokokai.or.jp/


コミュニティビジネスで地域を元気に

出席者

藤田正美 三重県商工会連合会会長
緑川恵克 福島県矢祭町商工会会長

司会

桑原 元 全国商工会連合会常務理事



桑原 商工会が置かれている多くの地域は疲弊していて、「普通の暮らし」にさえ支障をきたすようなところが増えつつあるといわれています。そうした中、地域資源を生かしながら、地域の課題をビジネス手法で解決するコミュニティビジネスが注目され、さまざまな業種によって構成される商工会の多くで、コミュニティビジネスで地域にお金を循環させる仕組みづくりが進められています。
本日は、コミュニティビジネスの重要性を提言する藤田三重県連会長と、ユニークなコミュニティビジネスに取り組まれている緑川矢祭町商工会会長のお二人に参加いただき、地域を元気にするコミュニティビジネスをどう立ち上げ、永続させていくべきかを一緒に考えたいと思います。
 はじめに、自己紹介や地域の現状についてお話しください。
藤田 工業大学の土木工学科を卒業しまして、7年ほど地元の建設会社に勤務、高速道や橋の建設に携わりました。29歳の時に父から商売をやってみないかといわれ、父が所有していた設備を引き継いでベアリング工場の経営者になりました。10名ほどの町工場で、典型的な下請けでしたので、非常に大変でしたが、やりがいもあって、中小企業での地域での役割や下請け企業のご苦労は自分なりによくわかっているつもりです。
その後、業種転換して、清流日本一といわれる宮川のアユや猪や鹿など天然素材のジビエを扱う食品会社を始めるなどさまざまな経験をし、39歳で三重県議会議員に当選させていただき、現在に至っています。所属は玉城町商工会です。法人役員として経営に参画しています。

藤田正美会長

緑川 私たちの矢祭町は東北最南端の町です。平成の大合併に当たって「市町村合併をしない矢祭町宣言」をし、独立独歩の町として知られていると思います。人口6800人のところで、独歩でいくなんてできるのかと心配いただいたと思います。財政は厳しいですが、行財政改革に着手、自らできることは自分たちで力を合わせ、自立できるまちづくりに励んでいます。
行政が合併しないのですから、商工会も単独で活動しております。町が目指すのは「元気な子供の声が聞こえるまち」で、商工会も行政と一体となって実現に向かっているところです。
 私も建設会社の社長をしていますが、公共事業は厳しく、大変な時期を迎えていると思っています。

地域基盤の再生はコミュニティビジネスで

桑原 全国連で平成22年度事業計画を作成する際に、藤田会長は全国連副会長として、コミュニティビジネス、ソーシャルビジネスに深く関与していかなくてはならないと強く提案されました。また、三重県連は国・県にコミュニティビジネスに対する環境醸成支援策を提言しています。藤田会長がそうした考えに至った経緯をご披露いただけますか。
藤田 経済のグローバル化、市場原理主義が進む中で、地方の抱える深刻な問題は、人口の減少、超高齢化が進み、経営基盤の弱い小規模事業所がどんどん疲弊して、町の社会機能というか、生活機能も崩壊してきていることだと思うのです。自然環境に恵まれた地域の中で、生活をするための基盤が失われ、人が住み続けられなくなることは憂慮すべきです。
 まちの商業や工場など小規模事業者は地域の生産、雇用、消費だけでなく、地域の伝統や文化を担っています。そして、地域に残る人材の育成の場にもなっています。小規模事業は地域のセーフティネットだという認識に立たないといけないと私は訴えているわけです。
 さまざまな立場にある事業者が協働・補完し、いろいろ知恵を使って取り組んでいくことによって、地域内の資金循環が広がってくるし、生きがいややりがいも出てくると思うのです。小規模事業者支援とひとくくりするのではなく、一次産品の加工、超高齢化社会へ向けて民力による福祉ビジネス、地元資金による生産・加工・流通までの取り組みによる貨幣循環の高度化など、ビジネスとして成り立たせながら、地域を元気にするためのサポート支援が必要であるのではないかというのが私の考えです。

商品券納税、もったいない市場とユニーク事業次々

桑原 矢祭町商工会は、スタンプ券・商品券による公共料金の支払いなどユニークな活動で知られています。どのような事業なのかご説明ください。
緑川 スタンプ券・商品券で納税や公共料金の支払いができる制度は、商工会女性職員の発案によるもので、町県民税、国民健康保険税、固定資産税などをはじめ介護保険料、水道料、保育料、幼稚園授業料などをスタンプ券・商品券で納税、支払いができます。 スタンプ券・商品券での直接納税は認められていないので、町民から持ち込まれたスタンプ券・商品券を役場がいったん預かり、スタンプ会発行の小切手と交換、現金化して納めるようになっています。スタンプ券や商品券の使い道が広がったので、町民から喜ばれています。

緑川恵克会長

桑原 「矢祭もったいない市場」も人気のようですね。
緑川 全国から寄贈された45万冊に及ぶ善意によってオープンした「矢祭もったいない図書館」がよく知られるところですが、その名前にあやかって、都内で規格外野菜などを販売するアンテナショップが「矢祭もったいない市場」です。 ちょっとしたキズがあるだけで市場に出すことができない。だけどおいしい。だからもったいないから食べてもらいたい思いいっぱいの市場です。お餅や味噌、梅干しなども含め、第1、第3日曜日にJR品川駅近くのビジネスホテル「東横イン」駐車場で販売していますが、大変な人気です。

東京での「矢祭もったいない市場」

避難所がついた防災グリーンツーリズム

桑原 矢祭町商工会では、これまで取り組んできた事業をさらに進め、地域資源∞全国展開プロジェクトで防災グリーンツーリズムを行うそうですね。防災グリーンツーリズムは、災害時に被災者を矢祭町に受け入れるということですか。
緑川 農業体験や避難訓練に参加した首都圏の住民に、災害時に町内の施設を避難所として開放する「特典」を加えたグリーンツーリズムで、これまでの農村体験ツアーに「安全・安心な避難所」という価値を加えたものと思っていただけばいいです。滞在型交流を盛り上げて、地域経済を活性化させるとともに、災害時に町と連携して1000人規模の受け入れ体制を整え、町民との交流を培う狙いです。
災害時の受け入れ体制などについて全国展開プロジェクト委員会に具体化の検討をいただいていますが、ツアーは、田植えや山菜とりなどの農業体験のほか、避難生活体験、消防団との避難訓練を行うなど、防災関連メニューを盛り込むなどが考えられています。
桑原 三重県は、さまざまな観光資源や地域資源に恵まれています。京阪神という大都市に近いという立地的なメリットもありますから、コミュニティビジネスも盛んに行われているのではないかと思います。いい事例があれば、ご紹介ください。

安全な食と永住を促進するLLPも誕生

藤田 中山間地で製材、車の修理などをしている異業種の7人の青年がそれぞれのノウハウを持ち寄って、間伐材を利用して軽トラックに載せるキャンピングカーを試作し、市場化を目指す動きがあります。また、私の地元である度会町では、度会町で一生暮らしたいと考える7人が「わたら村有限責任事業組合」を立ち上げています。 わたら村農法の米や野菜の販売、度会町の特産品お茶を利用したわたらい極上煎茶、わたらい茶うどん、茶々クッキー、お茶ミルクゼリーなど安心・安全な食の提供と、電気を使わない生ゴミ処理剤、活楽水と呼ぶ植物活性水、楽水という酵素水を販売しています。まちおこしとして、農林業体験、生ゴミゼロ運動、町民の雇用促進、町への永住促進を行っており、有機栽培による農法を確立させ、度会町の農業活性化を目指す活動もしてくれています。
このほか、耕作放棄地にゆずを植え、農業者と商工業者が結んで収益を上げようという動きなどの事例がいっぱい出てきています。
 三重県連でもこれらの活動を支援する環境づくりを大いにバックアップしていきたいと思っています。このような活動を行うための装置として、LLP(有限責任事業組合)あるいは異業種連携は大きな可能性を秘めています。

桑原 商工会が地域貢献活動やコミュニティビジネスに取り組み、そして永続させるには、どのようなことに留意したらよいと思いますか。

次代を担う人材の育成と確保が大切

緑川 町を背負う若い力が必要なので、後継者の育成が大事だと考えます。矢祭町も若者が都会に出ていくケースが多かったようですが、最近、青年部に戻ってきて活動する若手が増えて力強く思っているところです。
藤田 私も、次代を担う人材の育成と確保が大切だと思っています。若者の手による起業促進のため、チャレンジできる環境づくりが必要であり、LLPなど取り組みやすい組織体の育成も図らねばと思っています。失敗しても再チャレンジできる支援体制もつくってあげたいですね。
 地域には個々の事業者の経営努力だけでは解決できない課題が多くあります。地域内経済基盤を再生、元気にするには、事業者の経営維持とコミュニティビジネスなどに並行して取り組むことが大切です。
したがって、商工会は小規模企業が持っていない機能を補完し、その機能を発揮するためマンパワーを強化し、本当のプロ集団でなければなりません。小規模事業の分野は広いですから、足を運んで個々のニーズをしっかりととらえ、テーマに応じた施策を進めなければいけないと思っています。
桑原 全国の商工会に向けて、何かアドバイスがあればお願いします。

桑原元全国連常務理事

緑川 アドバイスということではなくて、私は事業というのはいきなり完結するものではなくて、1〜2年で芽を出し、育て、そして3年ぐらいで本当の運用ができるものだと考えてやってきております。早急に果実、結論を得ようというのではなくて、ステップ・バイ・ステップで着実にやっていくのがいいのではないかと思っています。
 そういう観点から、単年度でなく、継続的に実施できる補助メニューをご検討いただければと思っています。
藤田 まず成功事例を一つでも多くつくること。それらを広く知らしめることが大切であると思います。そして、お互いに切磋琢磨していくことです。
 商工会には100万人のネットワークがあるので、絆といいますか、その連携、知恵を生かして、まだ日の目を見ていない特産品があれば、商工会ごとに世の中に広めるチャレンジをしてもいいと思います。商工会が頑張ることによって、地域は必ず再生します。

* 詳しくは月刊「Shokokai」10月号をご覧下さい。