Vol.36 2010.4.9
発行/編集 全国商工会連合会
http://www.shokokai.or.jp/


座談会
さらなる会員満足向上を目指して

 全国連では昨年、巡回訪問によるきめ細かな経営支援をより一層充実させるため「相談指導事業改革検討委員会」を発足させた。委員長を務めた西本岡山県連会長と、委員として会議に出席してきた佐々木三重県連専務理事、窪田函南町商工会事務局長に、巡回訪問や指導力向上のための取り組みなどについてお話しいただいた。

[出席者]
 西本 和馬  岡山県商工会連合会 会長
 佐々木史郎 三重県商工会連合会 専務理事
 窪田 賢一  静岡県函南町商工会 事務局長

[司会]
 桑原  元 全国商工会連合会 常務理事


左から:
 窪田事務局長、佐々木専務理事、
 西本会長、桑原常務理事

商工会は 
行きます  聞きます 提案します


桑原 まずは、西本会長から委員会設置の経緯と取り組みについてお聞かせください。

桑原常務理事

西本 私は商工会が真の意味で会員のための組織であるためには、会員の声に真摯に耳を傾けることが最も大切だと思っています。
 石澤全国連会長は、会長に就任された昨年5月の総会で、いくつかの約束をなさいましたが、その約束の一つが、巡回訪問の強化でした。“会員の声に耳を傾けることは、巡回訪問からスタートする”。私は、この考え方に心から共鳴しました。地域の皆さまと協力しながら地域を育てることこそ、商工会の役割です。
 「巡回相談を核とした事業者の経営サポートをより充実させ、地域活性化につなげるために、委員会をスタートさせるから委員長に就任してくれないか」と石澤会長に要請され、微力ながら大役をお引き受けしました。
 昨年9月から12月にかけて精力的に委員会を開催し、会員や経営指導員へのアンケートによる実態調査のほか、会員企業を訪問し、懇談するなどして、意見を集約してきました。

若者の雇用創出に、地域資源を活かした産業を─佐々木専務

桑原 委員会では、地域の実情に触れながら、支援のあり方を検討してきたわけですが、みなさんの地域ではどんな問題点がありますか?
佐々木 都市部以外の地域は、特に人口減少や高齢化などが著しく、経済基盤自体が疲弊しています。その結果、若者の雇用創出の機会が失われていることが問題になっています。
 会員をサポートしながら、産業が停滞してしまった地域の再興を果たすために、コミュニティビジネスやソーシャルビジネスなど、地域の資源を活かした産業の必要性を感じています。
窪田 若者の雇用機会減少と同様に、後継者不足が問題です。人口減少によって潜在購買力が弱体化する中で、地元の仕事自体も減っています。  加えて、買い物客が大駐車場を完備した大型店に集中し、高齢化社会に必要な“近くて便利”な近所の商店が経営維持できない状況です。親の商売を子どもたちが継ぐ気にならないのは、当然のことだと思います。

桑原 まずは、西本会長から委員会設置の経緯と取り組みについてお聞かせください。

窪田事務局長

巡回訪問には、目的を持って出かけること─西本会長

桑原 全国連が行った会員へのアンケート調査によると、「指導が適切」という意見もある一方、「尋ねないと何もしてくれない」という意見もありました。こうした会員の不満を解消するために、どのような取り組みをされているかお聞かせください。
西本 岡山県では、巡回訪問の際に具体的な目的を持って出かけるようにしています。例えば、小売店を回るから、プライスカードやポップ(店内広告)のアドバイスをしようとか。
 忙しい経営者がわざわざ時間を割いてくれるわけですから、巡回訪問が有意義であったと思ってもらえるようにしなければなりません。
佐々木 三重県では、昨年12月から1万3000人の全会員に、月刊『商工会』誌を手渡しで配布しています。大雨の日に職員が届けに行ったことがあり、会員から「こんな雨の日によう来てくれた」と大変喜ばれました。
 そうした小さな積み重ねが、「何か困ったことがあれば商工会に相談しよう」という気持ちを醸成させます。職員も非常に嬉しそうでした。会員とのつながりに喜びを感じることは、職員にとって大事ですね。

佐々木専務理事

窪田 会員にタイムリーなサポートができないと、巡回訪問の意味がありません。
 昨年、函南町では、年末の金融相談を受け付けるために、10月末から経営指導員のみならず、全職員ですべての会員を巡回しました。会員も年末は大変たてこみますので、事務局から出向いたことに大変喜ばれましたね。
 また、巡回をするには職員一人ひとりに対する稼働日数の管理がなければ巡回計画は立てられません。ですから、これだけ訪問するという一日平均の巡回件数を「標準化」することが大変重要です。

経営の問題点に気づき、専門家につなぐのが指導員─窪田局長

桑原 経営指導員へのアンケートでは、巡回訪問は件数だけでなく質が大事だという回答が4割近くありました。指導の質を高めるために工夫されていることはありますか?
窪田 業務終了後の時間を活用し、専門家を講師に招いて職員の勉強会を開いています。特に経営指導員は、日々勉強し、自分の得意分野をさらに磨いてもらいたい。ですから、商工会が必要な書籍購入や情報収集の費用を負担して、経営者の意向を汲み取れるように指導・育成をしています。
 会員企業の問題点をつかみ、それを解決できる専門家につなぐのが指導員の仕事だと思います。
佐々木 おっしゃる通り、専門家につなぐことが大事ですね。そのためには、“気づく力”を養う必要があります。
 私は、商工会は“漢方医療”だと思っているんです。資金繰りに困ったから融資のあっせんをするのは緊急対応であって、いわば外科手術。そうなる前に気づいてサポートしてあげるのが商工会です。日頃からの付き合いが肝心ですし、変化を察知する力がないとだめですね。
 会員のようすから潜在ニーズをつかみ、気づいたことをアドバイスできるよう、指導員にはいつも意識しておいてほしいと思います。 西本 指導員は、折に触れ疑問を感じる癖をつけなければなりません。出向などで他の職場を経験させることも一つです。違う角度からの切り口が備わりますから。
 人材育成は、年次計画とたゆまぬ努力に尽きますね。

商工会地域のシンクタンクとしての役割を果たす─西本会長

 これからの商工会は、地域でどう舵取りをしていくべきでしょうか。
西本 趣向を凝らして努力している地域とそうでない地域の温度差を感じています。「相談指導改革検討委員会」の結論を踏み台にして、すべての役職員が一致団結して努力していくことが必要です。
 「巡回訪問」という小さな切り口から地域の経済団体としての大きな入口を見出すことが、50周年を迎える今、商工会に改めて求められているのではないでしょうか。
 商工会地域のほとんどが農業や漁業といった第一次産業中心の地域ですので、農・商・工が連携していくことが、一つの方向づけになると思います。商工会は“地域のシンクタンク”にならなければなりません。

西本会長

佐々木 地域は、住民と商工業者、農林水産業者が一体となってできています。そこには、商工業者ならではの社会的役割があるはずです。採算性と社会性を両立させた事業を地域に根づかせることができれば、地域経済における資金循環が回復でき、住民との絆も深まると思います。
 “民力を使った経済福祉”と私は言っていますが、つまり地域資源活用型のビジネスの創造が、地域振興策として有効ではないかと考えています。
窪田 地産地消を基本としたご当地グルメの研究開発を進めながら、安心・安全で利便性の高いまちづくりという観点での商工業を中心とした地域活性化策を、行政に積極的に提案していくことが商工会の役目だと考えます。
 県連と全国連は、商工会のそうした活動を今まで以上にサポートする必要があるでしょう。全国連、県連、単会の連携がうまく機能すれば、三層間の結びつきはより強くなり、商工会が地域で最も頼もしい存在となるのではないでしょうか。
桑原 では最後に、西本会長から委員長として締めくくりの言葉をお願いします。
西本 全国から委員として会議に出席していただきました皆さま、本当にありがとうございました。また、アンケート調査の回答などにご協力してくれた経営指導員や会員の皆さまにも、心からお礼を申し上げます。  このたびの委員会活動が無駄にならないように、巡回訪問の徹底と経営支援、そして地域振興に、これまで以上に力を注いでいきたいと思います。

* 詳しくは月刊「Shokokai」4月号をご覧下さい。