Vol.23 2009.3.10
発行/編集 全国商工会連合会
http://www.shokokai.or.jp/


座談会 商工会・時代に合わせ自己改革を

出席者

鎌田彰仁 茨城大学人文学部教授
川瀬重雄 滋賀県商工会連合会会長(東近江市愛東商工会会長)
寺田範雄 全国商工会連合会専務理事



 100年に一度といわれる経済危機の中、特に地方の中小企業は非常に厳しい経営環境下にある。商工会も法制化されてほぼ50年になるが、このような事態はかつて経験したことがないといっても過言ではない。
 組織一丸となって中小企業支援に取り組み、着実に成果を出す。今、まさに商工会の真価が問われているところである。
 こうした中、昨年、全国商工会連合会と日本商工会議所が共同で今後の地域中小・小規模企業の支援のあり方について検討する場を設け、12月に中間報告を取りまとめた。
 激動の時代にあって、商工会が地域や中小・小規模事業者にこれまで以上に頼りにされる存在であり続けるために、今後、どのような活動を展開することが考えられるか、共同検討会で報告取りまとめに尽力されたお三方に幅広くお話しいただいた。

―全国連では昨年十一月半ばに「中小企業非常事態宣言」を出し、即座に全商工会(一九〇三ヵ所)に「金融相談窓口」を設置するとともに、貸し渋り・貸し剥がし相談窓口も開設しました。今の不況が長引くほど全国的に素早い対応ができる商工会の役割が重要になってくると思いますが。

鎌田 自動車不況がその典型ですが、サブプライム問題から金融危機にまで進み、日本経済の土台も脆くも崩れてしまって、今までと同じように構造改革のアクセルを踏み込むことは限界にきていますね。土台の崩れの激しいのが地方であり、ものづくりを支えてきた中小企業に解体が始まっています。したがって、地方と中小企業を重視し、テコ入れして、土台の回復を図っていかなければなりません。これまで以上に、施策にしても考え方にしても変えていかなければならないのが今年だと思います。
 当然、商工会の役割はこれまで以上に大きくなりますから、困った時にすがったのに頼りにならないということになったら、商工会の次がなくなります。職員の資質の向上を図って経営指導に真剣に当たらなくてはなりません。

鎌田彰仁教授

川瀬 鎌田先生のおっしゃるとおり、窮地に陥った小規模事業者にとって、商工会が一番身近なサポート機関であることは間違いないですね。
 滋賀県の南部や東部には東レ、京セラ、パナソニックなどが進出し、おかげで人口も増加して経済活動は活発だが、中小・小規模企業は厳しい競争にさらされ、昨秋以降の急激な景気の悪化によって深刻な状況に陥っています。商工会がいかにスピード感を持って適切な対応ができるかが大変重要です。
 また、県北部、西部では経済活動が停滞しているので、個別企業のサポートはもちろん、地域でのビジネスチャンスの拡大が求められており、商工会の地域活性化への取り組みがこれまで以上に大きな意味を持つことになると思います。
寺田 中小企業の経営者の生の声を集めて政府に実態をぶつける、そのために全国連では毎月、小規模企業景気動向調査をしています。それが今回の緊急保証制度につながったと考えています。政策立案の過程における情報提供や短期間で全国津々浦々に緊急金融相談窓口を開設した組織の力という面で、商工会は評価していただいています。
 特に、金融相談については、年末に事務所を開けたり、周知徹底を図るパンフレットを配布したこともあり、十一月半ばから年末までの一ヵ月半で早くも六万五〇〇〇件にのぼる相談が寄せられました。問題は年度末を迎えるこれからで、中小企業の苦しい時にいかに役に立てるかで商工会の評価は決まる。一丸となって頑張らなければなりません。

商工会と商工会議所が得意分野を生かし、合併に勝る効果をあげる

−三年前の全国連と日商との共同研究会では「双方とも商工会は商工会同士、商工会議所は商工会議所同士でそれぞれが合併を推進する」「現段階において両団体の合併に係る法整備は不要」との結論に達したにもかかわらず、一部で同一行政区域の商工会と商工会議所との合併を強要したり、両団体の合併手続き簡素化のための法整備を求める声が聞かれます。商工会の活動実態や成果が行政や住民などに認知されていないということでしょうか。

川瀬 地方の財政が厳しくなるにつれ、商工会の役割と事業内容がわからぬまま一行政区域一経済団体論が述べられているのが実情でしょう。私も県の保証協会などいろいろな地域団体の役員をおおせつかっていますが、今の厳しい時こそ自分で出席して、地方のためになる発言をして商工会を知ってもらうようにしています。
 また、県内六ブロックで商工会と行政との懇談会をやっており、県の振興局長、市町からは市町長、部長に出ていただき、農商工連携、拠点事業などについて現状を報告し、意見交換を行っています。そうしたことで、滋賀県では商工会の存在が認知されていると自負しています。

川瀬重雄会長

鎌田 今、川瀬会長が言われたとおり、私もこの議論は財政論からきていると思います。県も苦しいのだから、各団体の補助金も当然厳しくなるという論理。
 それに、私は制度論と呼んでいるのですが、市町村合併による一行政区域一経済団体という制度で押し込められてきた感を正直持っています。どうしても効率化が求められる。効率化するには規模の利益、すなわち合併だということになる。効率化のため組織を大きくすることが果たして小規模事業者の対策として効果的かどうかは別問題で、これから検証が必要ですね。

寺田 商工会と商工会議所の合併問題を含め、小規模事業者支援のあり方については、両団体で平成十六年度と平成二十年度の二度にわたり検討しました。いずれも、それぞれの団体の役割、機能は異なっており、両団体の合併を強制すべきではない、合併は否定するというのが商工会議所を含めたわれわれの基本的な立場です。
 この問題が行政当局から出てくる背景として、自治体が商工会に本当に満足しているかどうかという点があることに気を配らなくてはなりません。つまり、商工会の専門的指導が不十分であると不満に思っている行政が一部あるということです。財政に理由があるとしても、商工会が補助金以上のアウトプットを出せば、強制的に合併という話が出るはずはない。
 私も商工会の現場を回り、市長さんの話も聞いたりしましたが、行政から厳しく言われる前に、自ら改革を図っていかなくてはならない面も多いと感じます。

求められるのは地域を意識した経営支援

―商工会がこれまで以上に地域から頼られる存在であるためには、どのような活動・取り組みが必要でしょうか。

寺田 短期的には目下の緊急的な資金繰り対策に全力で取り組まなければいけない。こういう時こそ商工会が組織をあげて機動的に活躍しないことには、地域から頼られる存在になりえません。地域の生活が成り立ち、雇用が成り立っていくには産業がしっかりしなければいけません。
 地方分権が進むと、各自治体も地元に産業を興すことを必死に考えますので、中期的には、農商工連携のような切り口で地域の一次産業と一体となって、新しい特産品の開発、あるいは地域資源を生かした観光事業に率先して取り組むなど、地方の自立に大きな役割を果たすのが重要となるでしょう。
 そのためには商工会はさらに実力をつけないといけませんから、資質の高い人材を育成する。そのための人事の一元化や更なる合併・広域連携を進め、しっかりした組織をつくり上げていかなくてはならないと思います。

寺田範雄専務理事

川瀬 先ほどお話しした「まるごと食館」の商品には賞味期限がありますから、弁当などは午後四時になったら半額で売ります。だから夕方はそれを知っているお客さんでにぎわっています。全部売ることで無駄が出ないので納入者は損にならず、地元のお客さんも喜ぶだろうと商工会が考えてアドバイスしたものです。創意工夫をしなければいけないというのが商工会の原点でしょう。
 もう一点、常に役職員が忘れてならないことは、きちっと結果が出せる組織にしなければならない。また、商工会のよい面を積極的に外部に向けて発信し続けるということも必要ですね。
鎌田 経営支援と地域貢献はメダルの表裏なのです。少子高齢化、環境、地域資源とかという言葉を組み合わせながら、経済活動が公共的目的につながるような仕組みをつくるというように、経営支援のあり方が変わってくるに違いありません。
 創業というと、情報、バイオとかハイテクベンチャーばかりが頭に浮かびますが、地方の消費者のニーズは食べ物、ファッション、インテリアなど小さなものをつくり込んでいくスモールビジネスにあるのです。小さいけれどキラッと光って大きな存在感を示す事業を商工会で育ててほしいと思います。



* 詳しくは月刊「Shokokai」3月号をご覧下さい。