Vol.07 2007.11.09
発行/編集 全国商工会連合会
http://www.shokokai.or.jp/

地域をリードする商工会を目指せ

●出席者
松井 一男   新潟県中之島町商工会会長
前島登志夫  長野県高森町商工会主席経営指導員


●司会
寺田 範雄  全国商工会連合会専務理事



寺田 三位一体改革や平成の大合併など大変革の波に商工会は大きな影響を受けています。本日は、時代の変化にきちっと対応していくと同時に、これからますます高まるであろう商工会への期待にどう応えていけばいいかを大いに語っていただきたいと思います。まず、自己紹介を含め、地域特性や現況をお話しください。
松井 中之島町は二年前に長岡市と合併しました。信濃川と支流の刈谷田川に挟まれた低平地で、米作りに特化した地域であり、長岡市のベッドタウンとして栄えてきました。商工会は物販業や土木工事業や大工さんなどが会員で、三〇〇名ほどです。八年前の四一歳の時に会長を仰せつかり、何とか会員減少を抑えている状況です。


松井一男会長

前島 高森町は南信州に位置し、天竜川西側の河岸段丘にあります。市田柿発祥の地として知られています。農林業主体でしたが、昭和三、四十年代に工業がおこり、会員は電機、精密機械のウエートが高く、土木、商業が次いでいます。
 私の商工会歴は、昭和四十九年に補助員として採用されました。経営指導員になってからは二九年になります。夢中でやってきましたが、近年、商工会はどうあるべきか、商工会の存在価値は何か、輪郭がわかってきてからは、やりたいことがいっぱい出てきて、忙しい楽しさを味わっているところです。商工会の運営は、事務局が提案、三役会・理事会がそれを掌握し、役員主体で商工会事業を行うというよい形ができています。

行政合併で育児環境が向上・中之島町、住みたい町ナンバーワン・高森町

寺田 行政合併で地域間格差が生じているといわれますが、地域にどのような変化が出ているのでしょうか。
松井 都市住民と地方住民とのサービス格差はいかんともしがたいです。サンダル履きで行ける場所に行政施設やコンビニがあるところと、何をするにも軽トラックに乗っていかなければならないところでは、安心感もコストも違います。行政合併によってこれが拡大しているのかなと思います。
前島 高森町は行政合併をしておりません。行政との関わりで大きな変化はありませんが、地域内の小売業に占める大規模店の売り場面積の割合は九〇%に及び、小規模店を圧迫、流通業の格差を生んでいます。その結果、お金が町外に流出し、地域に循環しないのが問題だと思います。


前島登志夫主席経営指導員

寺田 少子高齢化が進んでいますが、地域への影響はどうでしょう。 松井 少子高齢化は進んでおりますが、そう悲観することはないと思っています。中山間地では「限界集落」と呼ばれる若者がいない地域がありますが、私どもの周辺は三世代同居で、交通も便利なので、共稼ぎしながら年寄りが子供の面倒を見るなど支えながらやっている世帯が多いです。したがって、人口減少もひどくありません。逆に、長岡市との合併によって子育て環境はよくなっていると感じています。
前島 近隣で実施したアンケート調査で高森町は住みたい町のナンバーワンです。中学生まで医療費を無料にしたり、行政の効率化を図ったり、公園も多く、子供にやさしい芝生だけにしたりするなど、早くから対策に取り組んできたからです。飯田市に隣接して工場が多く、税収もあり、高森に住みたいという若者の意向をとらえたまちづくりを行えば、自立できるととらえているようです。

合併で商工会の地位向上、責任重く

寺田_ 商工会を取り巻く環境変化はどうでしょう。
松井 中越の中核都市であった長岡市と九つの市町村が一緒になった吸収合併の典型といえますが、私ども商工会は行政合併で地位が向上しました。それまでは農業中心で、商工会はメーンでなく、商工会会長は土地改良区理事長の下におかれていた感じでしたが、広域合併に伴い農協、土地改良区も合併し、経済団体で残るのは商工会だけとなってきたためです。
 商工会地域を疲弊させる要因はたくさんあり、放っておけばどんどん疲弊してしまいます。商工会会員は生産者、事業者であると同時に消費者でもあるので、商工会として地域の声をあげていこうと思っています。
 長岡市の合併理念は「ゆるやかな合併」ということでして、商工会組織は大事に扱ってもらっています。商工会活動はやりやすくなっていますが、行政のお手伝いも主導的な立場でやらなければいけないので、それだけ責任感も増しています。

広域連携で補助金、事務局を一本化

前島 実は、連携した三つの商工会の小規模事業の補助金を一本化し、事務局体制も一元化しておりまして、経営改善普及事業については合併したのと同じ効果が出ているのではないかと思っています。長野県の場合は、小規模事業数三〇〇というのが一つの枠となっていまして、三〇〇以下だと補助資金が半分になる。連携することで八五%になります。連携によって、規模の面で厚みを増して対応したわけです。
 四月から試行錯誤でやっておりますが、補助対象職員がすべて幹事商工会の帰属となったことで、三商工会の三役も幹事商工会で定期的に会合を持つようになりまして、経営改善普及事業だけでなく、他の事業でもいろいろ連携するようになるというメリットも生まれています。
寺田 世の中、専門分野が細分化され、より専門的な指導が求められるようになっています。そのための人材養成を計画的、組織的に行うことや、巡回指導を分担し合うなど、仕事のやり方を全体で見直していく必要があると全国連では考えているのですが、松井会長はどうお考えですか。


寺田範雄全国連専務理事

松井 専門職員の養成は両刃の剣の感が否めません。指導員はどこまでいっても弁護士やプロのコンサルタントにはかないません。職員の仕事は会員の困ったことを分析して専門家に繋ぐコーディネーターの役割が大切と思います。相談するだけで不安が解消し、八割が解決するといわれます。  もちろん、できない職員よりできる職員の方がいいに決まっていますが、会員に対して愛想の悪い職員が一番困る。商工会の本来のあり方、事業者の応援団、サポート部隊としてそこにいつもいるという安心感が損なわれ、会員の減少、組織率の低下を招かないかとの懸念を持ちますね。
寺田 商工会の組織そのものが独立してあってもかまわないが、事務局までも独立して小さな部隊でバラバラにやるのは将来難しくなるでしょう。心配しているのは指導員が一人しかいないような小さいところです。合併などを機に事務局を一本化して、ひと回り大きな組織の中で人材養成などを進めていったらどうだろうと考えているわけですが、前島さん、指導員としてどう思われますか。
前島 指導員それぞれの問題のとらえ方、考え方は一ヵ所に帰属していることでよくわかるようになります。また、隣接地域については、会員や地域情報について熟知できないことが、広域連携することでよく見えてきます。見えてくることによって、経営指導員としてどう捉えるか、自分の目線だけでなく、連携で現在は指導員が四人おりますから、四人の目線も加わってより的確になると考えます。同時に、他の指導員の考えもわかって研鑽にもなります。ある相談事柄を判断して、誰が担当して解決すればいいかなど、相談指導業務の標準化を進めることで、指導に差異がなくなってくるのではないかとも思っています。

商工会の目指す道、方向性について

寺田 最後に商工会の目指す道、方向性について、お二人の考えをお聞かせください。
松井 一〇年前にTMO構想が華やかに登場し、いろいろ取り上げられましたが、新しい概念に飛びつくのではなく、もともと商工会は地域の振興発展を図っていくべきだとの国の指針がありますし、まちおこし、まちづくりの担い手としての、それも多数の会員を擁する法的な裏づけのある団体としての地位は揺るぎないものです。自信を持って経営改善普及事業と地域振興の両輪をきちんと進める、これが商工会の責務で、その実現のため、何が必要かを考えていくことでしょう。
 もう一つ、青年部の活動家を決して逃がさないようにしないとだめです。四〇歳で卒業し、理事になって戻ってくるまで一〇年、二〇年空いてしまう。何とももったいない。平均寿命が延びているのですから、商工会議所のように五〇歳まで上げることも一つの手ですね。
前島 地域の中の固有の価値を育てていくための軸となる組織であるという認識を持つ必要があるのではないでしょうか。昭和三十五年の法制化に伴い、経営改善普及事業がスタートしましたが、今の経済社会のニーズに合うよう対応していくことが必要です。商工会職員で対応するには限界があるので、中小企業診断士、弁護士や税理士などの専門家と連携したネットワークによる経営改善指導のシステム化を考えることも必要でしょう。

* 詳しくは月刊「Shokokai」11月号をご覧下さい。