Vol.04 2007.8.09
発行/編集 全国商工会連合会
http://www.shokokai.or.jp/

座談会「これからのまちづくりと商工会の役割について」

鈴木 浩
国立大学法人福島大学教授

中山幸也
埼玉県幸手市商工会会長

司 会
寺田範雄
全国商工会連合会専務理事


 平成十八年度にまちづくり三法が見直され、各地域の特色を生かしたまちづくりが可能となり、まちづくりに商工会が果たす役割が高まっている。鈴木福島大学教授と、幸手市商工会の中山会長に、全国のまちづくりの取り組みや、まちづくりに果たす商工会の役割などについて語ってもらった。


寺田 「これからのまちづくりと商工会の役割について」お話をお伺いしていきたいと思いますが、まずはじめに自己紹介をお願いします。
鈴木 都市計画と地域計画が主な専門です。いま注目されている「コンパクトシティ」についての本を二月に出版しました。これまでの議論は海外の事例紹介が中心で、これからのわが国の「まちづくり」をどう考えたらいいのかという問題意識からまとめました。


鈴木 浩氏
(国立大学法人福島大学教授)

中山 店は三代目、家系は一二代目で、家具店を経営しています。かつてはブライダルと住宅関連の二本柱だったのですが、時代の急激な変化に伴いブライダル需要は縮小しています。
 わが「まち」幸手市は、北千住から草加、越谷、春日部、幸手と、江戸時代からの日光街道の宿場町として繁栄しましたが、その後の時代の波に乗りきれず、気がついたら置いていかれてしまった、という状況です。


中山 幸也氏
(埼玉県幸手市商工会会長)

衰退は起こるべくして起こった

寺田 全国的にみられる中心市街地の問題について、どんな現状認識をお持ちですか。
鈴木 中心市街地の空洞化の背景は、かなりはっきりしています。ご承知のように、昭和三十九年に東京オリンピック、高度成長プラス東京オリンピックで、車社会が劇的に進みました。
 車社会の到来で、バイパスなどのインフラが整備され、多くの公共施設が郊外に出ていく。これが中心市街地空洞化の大きな引き金となりました。ただし、高度成長の右肩上がりの時はパイも大きくなっていたので、中心市街地もまだ勢いづいていました。そこに人口減少、高齢社会、バブルの崩壊があって、行財政も深刻なダメージを受け、図体だけ大きくなってしまったというわけです。
寺田 いわゆる中山間地域と中心市街地との関係、あるいは中心市街地の周辺にある旧町村部における商店街の現状はいかがでしょうか。
鈴木 実は、農業がきちんと守られていないところに大型店が入り込んで、中心市街地をいじめている構図なんです。地方の商工会は周辺の農村部とどういう連携がとれるか。これが今後の勝負になるでしょう。
寺田 では、大店法の施行や廃止、大店立地法をはじめとする「まちづくり三法」の制定や改正など法律面での動きは、「まちづくり」のあり方に対してどう影響したのでしょうか。
鈴木
 規制緩和をした大店立地法は、地方の中心市街地の空洞化に拍車をかけた。昨年の「まちづくり三法」の改正は、規制緩和の時代にあってむしろ規制強化をしたもの。やはり、社会を守るためにルールは必要なんだ、という意識が高まったといえます。

行政と商工団体の連携がTMO成功のカギ

寺田 中山会長の地元は、幸手市商工会がTMOの役割を果たしておられます。これまでの経験から、どんな成果があがっていますか。
中山 私どもは市の産業振興課が窓口で、毎日のようにいろんな情報を交換しています。われわれにできることには限度がある。「まちづくり」は、行政と商工会の両輪で実施しなければならないと思います。
 主な事業成果ですが、市の土地を借りて昨年五月から始めた「ドッグラン事業」があります。中心市街地活性化の新たな誘因手段として、非常に斬新なものです。管理委託方式で、会員事業所にお願いしています。
 初年度に来場した犬は約一万六〇〇〇頭で、今年は二万頭突破が目標です。ドッグランの利用者は市外からの来場者が八五%、若い人が圧倒的に多い。今後は市内商店街との連携が課題です。
 そのほか空き店舗対策事業として、商店街の中心に市民の憩いの場「しあわせカフェアミ」を一昨年秋にオープンしました。さらに、今年二月にはチャレンジショップ三店舗と複合店舗「しあわせのえきプラス」をオープンしました。まだ慣れない事業のため大変苦労していますが、お客さまの信頼を得るように日々努力を重ねています。

注目される福島県のまちづくり条例

寺田 都道府県や市町村で「まちづくり」に関する条例制定の動きが盛んです。とりわけ福島県の商業まちづくり条例はその第一号に当たります。鈴木先生は条例制定に当たりご指導されたと伺っています。「まちづくり三法」とこの「まちづくり条例」の違いは何ですか。
鈴木 福島県の「まちづくり条例」と「まちづくり三法」が圧倒的に違うのは、「まちづくり三法」で大型店を規制しているのはあくまでも都市計画区域内であり、都市計画区域外は相変わらず規制できないのが現状です。  福島県の条例が一歩進んでいるのは、大型店の立地を誘導する地域と、立地を規制する地域を県内全域において明確に分けたことです。大型店が進出できるのは、福島県内の六〇の自治体のうち、一〇の市と町に限定しています。
 なぜかというと、福島県は七つの自律した生活圏をめざしているからです。他の県のように、宮城県なら仙台といった具合に一極集中をとっていない。そこで、各生活圏の中心市街地に大型店を誘導し、他の地域への立地を規制しました。

商店街、商工会はいま、行動する時

寺田 最後に、全国で「まちづくり」に取り組んでいる人たちにアドバイスをお願いします。


寺田 全国商工会連合会専務理事

中山 旧市街地は病気にかかっています。相当な難病です。放置して見ているだけですむ病気ではありません。行動する時期です。商工会が先頭に立って旗を振り行動することによって、会員はもとより、地域住民が目覚める。もう一度、とにかく挑戦しようと、特に商店街の皆さんが戦う意欲を持ってくれれば、まだ「まちづくり」には望みがあります。
鈴木 最初にやるべきことは「この『まち』は変わるかもしれない」という新しい風を吹き込むことです。そのためには行政と農業を含めた産業界、そして市民がスクラムを組んで「わが『まち』はこういう『まち』にする」という目標を発信する。いわゆる、グランドデザインですね。グランドデザインを発信するための議論の場を商工会が中心となって作り上げていくことが重要です。

※本文は抜粋記事です。座談会の詳しい内容については月刊「Shokokai」8月号をご覧下さい。
参照〈http://www.satte-sci.or.jp〉